「臨床実習において学生が実施可能な基本技術の水準」について

日本理学療法士協会が「臨床実習において学生が実施可能な基本技術の水準について」という資料を公開しました(2019年10月21日付)。

臨床実習において,学生にどこまでさせるかということで悩むことは多いので,協会が指針を示してくれると助かります(指針と捉えていいのかどうかは不明)。

しかし,結局は曖昧なのかなと感じました。

水準 I から III までがあります。

  • 水準I 指導者の直接監視下で学生により実施されるべき項目
  • 水準II 指導者の補助として実施されるべき項目および状態
  • 水準III 見学にとどめておくべき項目および状態

水準IIの説明で「急性期やリスクを伴う状態の水準Ⅰの項目」という説明がよくでてきます。
「学生が行ってもよいとしてるけど,急性期やリスクを伴う状態であれば,指導者の補助として行ってね」ということです。

さて,リスクを伴う状態とはどんな状態でしょう。
具体的に何がリスクなのかが提示されていません。

水準 I の教育目標のところに「臨床実習で修得し対象者に実践できる ただし、対象者の状態としては、全身状態が安定し、学生が行う上でリスクが低い状態であること」とあります。
曖昧な文ですが,学生が行う上でリスクが低い状態とは,全身状態が安定していることであると読むことができます。

それでも,全身状態がどれくらい安定していればいいのかは分かりません。
リスクが高い状態は全身状態が安定していないことだけではありません。

各基本技術においてどんなリスクがあるのかは分かっていても,そのリスクによって学生が実施不可能となるのかどうかが分かりません。
そこを知りたいのですが,書かれてはいません。

急性期というのも曖昧な表現です。

例えば,整形外科の手術後は急性期ですが,術直後,術後72時間,術後2週間など,どこまでが急性期でしょうか?
また,水準 I(学生が実施可能)の中に関節可動域検査がありますが,整形外科術後の急性期と脳卒中の急性期とを同じように扱うことはできないような気がします。
結局はリスクが高いかどうかを個別に判断することになり,先ほどと同じ問題にぶつかります。

理学療法の臨床実習制度は過渡期の混乱の中にあるのかな?と改めて感じました。

2019年10月24日

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