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臨床実習

臨床実習中における学生への指導について

投稿日:2018年11月5日 更新日:

理学療法士協会のホームページの会員向け情報に「[その他]臨床実習中における学生への指導について」が掲載されました。
その一部を取り上げて,それに対する私の考えを書いてみたいと思います。
取り上げるのは以下の文です。

①実習時間内での日誌・課題作成等の完結
日誌・課題作成等については、理学療法士作業療法士養成施設指導要領に基づき、臨床実習時間内にて完結できるよう、養成校と実習先施設との十分な打ち合わせに基づき計画し、実施ください。

まずは指導要領がどうなっているのかを確認します。
以下の2つが該当するところです。

単位の計算方法については,一単位の授業科目を四五時間の学修を必要とする内容をもって構成することを標準として,授業方法に応じ,当該授業による教育効果,授業時間外に必要な学修等を考慮して,一単位の授業時間数は,講義及び演習については一五時間から三〇時間,実験,実習及び実技については三〇時間から四五時間の範囲で定めること。
なお,時間数は,実際に講義,演習などが行われる時間を持って計算すること。

臨床実習については,一単位を四五時間の実習をもって構成することとし,実習時間の三分の二以上は病院または診療所において行うこと。

これらの解釈を説明します。
1単位の授業時間は45時間なのですが,授業時間外に勉強が必要である科目では1単位の授業時間を45時間よりも少なくするということです。
1単位が30時間になっている科目は15時間の授業時間外の勉強を想定していることになります。
1単位が45時間になっている授業では,レポートなどを作成させる場合には授業時間内に作成させることになります。
臨床実習が1単位45時間になっているということは,課題は実習時間内にさせることになります。
この解釈は以前の職場の上司から習ったことなのですが,その根拠となるものは見つけられていません。
ですが今回,理学療法士協会が「日誌・課題作成等については、理学療法士作業療法士養成施設指導要領に基づき、臨床実習時間内にて完結できるよう」と言っていることが,間接的な根拠になりそうです。

皆さんはこの実習時間内で課題作成を完結させることについてどう思ったでしょうか?
「実習時間内で作成できる程度のゆるい課題で,ちゃんとした理学療法士を養成できない。理学療法士のレベルが下がる」と思った方がいらっしゃるのではないでしょうか?
このことを考える材料になりそうな私の考えを2つ示したいと思います。

1)絶対に提出しなければならない課題

実習時間内での課題作成は,絶対に提出しなければならない課題について言っているのだと思います。
単位を修得するための試験を受けなければ,単位が認められません。
同じように,実習で課題を提出しなければ,実習の単位は認められません。
そのような課題は実習時間内に作成させましょうということだと思います。
実習時間外に勉強をしてはいけないという意味ではないでしょう。

実習日誌のように,実習を行ったうえで翌日までに提出しなければならない課題が,6時間かけないと完成しないとなったら,明らかに非常識です。
仕事に置き換えてみましょう。
カルテは,理学療法を行った後に,普通はその日のうちに書かなければならないものですが,それが毎日6時間かかるような量を要求されたとしたらどうなるでしょう。
毎日残業で,残業時間が過労死ラインを超えてしまいます。
そんなことを実習生に強いるのはやはり変だと思います。

では,実習時間内に作成できる課題とはどのようなものでしょう。
いわゆる症例レポートは,現実的には実習時間内に完成させることはできませんので,最低限提出しなければならない課題としては不適切ということになります。
実習日誌や症例発表のレジュメであれば,実習時間内に作成することができます。
そして,どのくらいの量を書かせるかが問題です。
病院での業務では,カルテの記載とカンファレンスの資料の作成は,だいたい勤務時間内に終わるのではないでしょうか?カンファレンスの資料作成は残業になるかもしれません。
それを考えると,実習日誌の量は,理学療法士が毎日カルテに書く量が上限ということになります。
当然,学生は時間がかかりますので,もっと少なくする必要があります。
実習日誌に何を書くかは,学校によって異なるとは思いますが,実習で行った内容はだいたい書くと思います。
実習で行ったことや学んだことを,全て事細かく記載するとなれば,実習時間内には終わりません。
何かを省く必要があります。
例えば「9時00分〜9時20分 脳卒中左片麻痺のAさん 歩行介助を体験」みたいなことは,最低限書く必要があるでしょう。
それに加えて,何が難しかったかとか,教えてもらった方法などを書くのでしょうが,それは簡単に書くところもあれば,詳しく書いているところもあるというのが,実習生が書くことのできる現実的な量ではないでしょうか。
担当症例があれば,担当症例のことを書くのが精一杯で,他に体験した症例のことは内容が薄くなると思います。
これくらいの量の実習日誌であれば,実習時間内に作成させることができるでしょう。
もちろん,このような課題の提出だけで実習の成績は100点満点になるというわけではありません。
提出できなければ不合格になるということです。

症例発表については,その準備の時間を実習時間内でつくる必要があると思います。

さて,現場で働いている理学療法士の方は,理学療法に関して勉強するのは勤務時間外だと思います。
専門職というものは,そういうものだと思います。
決められた実習の時間だけで,充分な成長は見込めないのが現実です。
ですので,実習生が実習終了後に勉強するのは当たり前のことかもしれません。
実習時間外に学生の自由意志で行う勉強や,提出できなくてもいいという条件で行わせる課題などの問題は,長くなりそうですので,別の機会に考えたいと思います。

2)きつい実習に学習効果はあるのか?

いわゆるきつい実習というものがあります。
そのきつさの一つは課題が多いということです。
よくあるパターンは,その実習を乗り越えた学生が,臨床にでてスーパーバイザーになったとき,「たくさんの課題で辛かったけど,そのおかげで成長できた」と懐かしみ,武勇伝としてドヤ顔で語り,実習生に対して「お前も頑張れ」というパターンです。
ここで考えて欲しいことは,課題が多かったことと,成長できたことに因果関係はあるのかということです。
因果関係は証明できるのでしょうか?
課題の量が少なければ,もっと成長できたかもしれません。
疲れていると考える力は落ちるということから考えると,課題が少ない方がより成長できた可能性は充分にあります。

別の場合も考えてみましょう。
いわゆる楽な実習にいって,いまひとつ成長した感じがしなかったとします。
そして,次にきつい実習にいって,不合格になるかもと不安を感じながらも無事に合格したとします。
そうなると,きつい実習で成長できたと感じるでしょう。
しかし,ここで考えなければならないことは,介入に対して結果がすぐにでるとは限らないということです。
いわゆるゆるい実習での指導者が,とても指導がうまい人で,実習生に苦労を感じさせることなく,効果的な実習を行っていたのかもしれません。
そしてその効果はすぐには出ず,次のきつい実習の途中でたまたま出てきたのかもしれません。

何が正しいのかは分かりませんが,短絡的にとにかくたくさん勉強させるということを,私はしたくないと思っています。

現時点での私の個人的な考えを書きました。
実習の方法について考える材料になれば幸いです。

2019年5月27日 加筆修正
2018年11月18日 加筆修正
2018年11月5日

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