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臨床実習

臨床実習とパワーハラスメント-その指導は効果的?

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前回の記事に続いて,臨床実習におけるパワーハラスメント(パワハラ)について,僕の考えを書いてみます。
パワハラが生じる原因は以下の2つだと考えています。

1.スーパーバイザーが心理的な問題を抱えている
2.指導方法を知らない

今回は後者の「指導方法を知らない」について書きます。

指導方法が間違っているとか,指導方法が偏っているともいえます。
臨床実習での指導が,苦痛や恐怖を与えることで相手を変えようとする指導に偏りすぎているのではないかと僕は感じています。

苦痛や恐怖を与える指導は,もちろん一定の効果があります。
この指導は広く一般に浸透していると思います。
「よく分かっていないようだから,もっと厳しく指導しよう」という発想に違和感がない人は多いのではないでしょうか?
しかし,効果的でないことも多く,苦痛を与えるという点ではパワハラと紙一重です。

もっと詳しくみていきましょう。
苦痛や恐怖を与える指導は,「してはいけない」ということを理解させるのには効果的です。
「右のレバーを引くと餌が出る,左のレバーを引くと電流が流れる」というようにしておけば,ネズミでも左のレバーを引いてはいけないことを学習するでしょう。
でも,理学療法の実習で学ぶことはもっと高度なことです。

例えば,問題点(治療対象)の抽出は,たくさんのデータを統合して解釈するという課題です。
右か左という単純なものではありません。
実習生が問題点の抽出を行おうとしたとき,何度も同じ間違いを繰り返すということはよくあることです。
レポートや実習日誌をみながらフィードバックを行うことになると思いますが,スーパーバイザーは熱くなりがちです。
「何回言ったら,,,」と語気を強めてしまいます。
感情的になっているのですが,それが指導だと思っているのでセーブしない傾向がありそうです。
論理的な説明もしているのですが,それを強調しようとして「苦痛や恐怖」を足してしまっているのかもしれません。
語気を強めることで,実習生は「自分は間違っている」と強く認識することでしょう。
でも,どうすれば間違いを繰り返さないかは分かりません。
もし,「怒られた」という恐怖を強く感じてしまえば,萎縮して余計に考えられなくなってしまいます。
逆効果です。
そして,パワハラを受けているという気分が増していきます。

次に,実習生の評価が不十分なのでは?ということについて書きます。
実習生による担当症例の評価ではなく,スーパーバイザーによる学生の評価です。

担当症例の評価を始めるときに,血圧を測らなかった学生がいたとします。
話を聞いてみると血圧を測る重要性を理解していなかったので,その説明をしました。
そして,次の日にまた測らなかったとします。
繰り返されるとスパーバイザーは感情的になってしまいがちです。
そして,実習生の話を聞くこともなく,「昨日あんなに説明したのにまだ分かっていないのか」と叱りつけてしまうスーパーバイザーがいます。
いきなり叱ってしまうのはおかしなことだということは,ちょっと考えればすぐに分かります。
重要性は分かっているけど,他のことに気をとられて血圧を測るのを忘れてしまったのかもしれません。
他の症例についたときはどうだったのかを確認したり,「何か忘れていない?」と聞いたりすれば分かります。
こういうことをすっ飛ばして,いきなり決めつけて叱ってしまえば,それは実習生にとってはパワハラに近くなっていきます。

これは,たんに感情的になってしまったというだけでなく,実習生の評価がうまくできていないという問題もあると思います。
でも,実習生に対して十分に評価することなく指導してしまうスーパーバイザーは,患者さんに対しても同じことをするのでしょうか?
それはあまりないようです。
評価して対策を考えるという基本的な問題解決のプロセスは患者さんでも実習生でも同じです。
でも,患者さんにはできても実習生にはできないということがあるようです。
なぜでしょう?
多くの学生に関わってきた経験から言えることは,理学療法士の養成校で問題解決のプロセスを学んだ人は,理学療法の場面でしかそれを実行しないのではないかということです。
理学療法士の養成校に来る前から問題解決のプロセスを身につけていた人は,どんな場面でも問題が生じれば評価して対策を考えます。
何れにしても,患者さんを評価せずに治療したらおかしなことになるように,学生を評価せずに指導してしまえば,それは的外れな指導であり,指導を受ける側がパワハラと捉えてしまってもおかしくはありません。

まとめます。
「心理的な問題を抱えているスーパーバイザー(前回の記事)」が,苦痛や恐怖を与える指導が一番いいと信じ込んでいて,実習生を評価することが不十分になっているというのが,パワハラが生じる構造なのではないかと考えています。
このような構造は実習以外にでも,新入社員の指導,部活動,親子など様々なところでありそうです。
つまり,実習でのパワハラは,実習の問題ではなく,社会の問題なのではないでしょうか?

さて,実習の真っ只中にいる学生はどうすればいいのでしょうか?
現時点で言えることは,間違った指導は健全にスルーするための知恵を絞ってみようということです。
そして,おかしいなと思ったら信頼できる教員に早めに相談しましょう。
自分の心がおかしくなっていると感じたら,早めに受診した方がいいでしょう。
あくまでも一般論ですが,,,

2018年10月20日

-臨床実習

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