チコちゃんはパワハラ?

NHK総合テレビの「チコちゃんに叱られる」という番組をご存知でしょうか?
「ボーっと生きてんじゃねえよ!」という決めゼリフが2018年ユーキャン新語・流行語大賞のトップテンに入っていました。
5才のチコちゃんが問いかける素朴な疑問にゲストが答えられないと、チコちゃんに「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と叱られるという番組です。
何度か観たことがあり,とても楽しい番組です。
でも,ちょっと距離をおいて考えてみると,教育と関連していろいろと心に引っかかるものがあります。
そのことについて書いてみたいと思います。

一番気になるのは「ボーっと生きてんじゃねえよ!」です。
これって,パワーハラスメント(パワハラ)じゃないでしょうか?
クイズに答えられないと,生き方を否定されるのですから。
それに,なぜ答えられなのかはまったく考慮されずにいきなり怒られるのです。
学校の授業で答えを間違った生徒に対して,あるいは会社で失敗をした部下に対して,先生や上司がいきなり「ボーっと生きてんじゃねえよ!」と怒鳴ったら,明らかにパワハラです。

バラエティ番組としてうまく作られているのでしょう。
観ている時に不快感はありません。
ジョークですよね。
でも,テレビでは流さないほうがいいような気がします。
私は,「ボーっと生きてんじゃねえよ!」という言葉が流行ることが,パワハラを行うことのハードルを下げることにつながるのではと心配しています。
答えらなければ叱られるという場面を繰り返しみていると,「能力の低い人間は叱ったらいい,能力の低い人間はひどい扱いを受けても仕方がない」という考え方が強化される可能性があります。
他人を攻撃したいという欲求を持っている人間に,パワハラをしてもいいという理由を与えてしまいます。

だからといって,この番組は中止すべきだとまでは思っていません。
楽しい番組ですし。
でも,「ボーっと生きてんじゃねえよ!」という言葉は普通は使わない汚い言葉であるということを多くの人と共有できたらいいなと思っています。

さて,最初にいろいろ引っかかると書きました。
他にも引っかかるところがいくつかあります。
ざっと簡単に書いておきます。

「ボーっと生きてんじゃねえよ!」を臨床実習で学生に言っている人がいるかもしれません。
こういうジョークは通じない人がいますし,通じない精神状態の人がいます。
私は,50%の確率で通じないと思います。

人は叱られるから勉強するのではありません。
楽しいから勉強するんです。

チコちゃんは「よく知っていて偉いね」と褒められていますが,知識がある人は偉いという考え方は古いのかもしれません。

5才の子供に叱られるというところが番組の面白いところですが,これは「大人は子供より賢くなければならない,教師は生徒より賢くなければならない」という考え方があるからでしょうか。
先生は生徒より賢いのではなく,教え方の専門家であるだけです。
私は,指導者の方が能力が高くなければならないという考え方を捨てたら,授業をするときに緊張しにくくなりました。

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