ネガティブな表現はできるだけ使わないようにしたいと思うことがありました。
FIMの勉強をしていました。
ご存知だとは思いますが,FIM は ADL の評価尺度です。
整容動作の採点方法に関して,テキストの旧版1)と新版2)で,同じことを説明しているのですが,表現が変わっているところがあります。
まず,旧版から引用します。
たとえば口腔ケア 5点または 6点(100%),整髪 3点(50%),手洗い 4点(75%),洗顔 2点(25%),ひげ剃り1点(0%)とすると,(100 + 50 + 75 + 25 + 0)/ 5 = 50 という計算で 3点となる。これはあくまで考え方を示したまでで,これほど細かく検討するのが望ましいわけではない。また平均するのは目分量でも構わない。
次に新版です。
5 要素それぞれで介助の比率が異なるのであれば,全体の負担量として,本人がしている割合と介護者がしている割合から考える。理屈っぽく考えたければ,5 要素それぞれのしているパーセントを加重平均すると考えてもよい。
つまり,各要素で採点して平均をとればいいのですが,実際には正確に計算するのではなく,全体をみて概算しても構わないということです。
これらを読んでいて私が引っかかったのは,新版の「理屈っぽく考えたければ」という表現です。
「理屈っぽい」は「必要以上に理屈を言い立てる傾向が強い」という意味です。
否定的な意味があり,どちらかというと悪口で使う表現です。
「理屈っぽく考えたければ」という表現から私が想像したことを素直に書いてみます。
この文章を書いた先生に,FIMの採点方法について質問するとします。
私:各要素で患者がしている割合が異なるときは,どのように採点するのでしょうか?
先生:全体を見て,大まかに割合を出してください。
私:全体を見るってどういうことでしょうか?
先生:(めんどくさそうな顔をしながら)各要素の割合を採点して,平均を計算してもいいのですが,そんな理屈っぽいことは考えなくてもいいですよ」
私はこの先生には質問をしなくなるでしょう。
これは私の偏った経験からくる勝手な想像です。
でも,否定的な言葉には否定的な考えを誘発する力があると思います。
「理屈っぽく考えたければ」という表現だけで,それほど否定的な気持ちにはならないのですが,一瞬引っかかります。
1回だけならいいのですが,同じようなことが続けば,大きな影響がでてくるでしょう。
授業であれば,質問しにくい雰囲気が徐々に出来てくるように思います。
表現のよくないところを指摘するということも,話しづらくなるという否定的な状況につながります。
大事なことは,自分自身が否定的な表現を自然と避けるようになることだと思います。
その小さな積み重ねが社会全体の雰囲気の良さにつながるのではないかと私は思います。
参考文献
1)千野直一(編): 脳卒中患者の機能評価 SIASとFIMの実際. シュプリンガー・フェアラーク東京, 1997, pp61.
2)千野直一, 椿原彰夫, 他(編著): 脳卒中の機能評価-SIASとFIM[基礎編]. 金原出版, 2018, pp93.
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2021年1月7日
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