視覚に関する機能障害は,理学療法士の治療対象とならないものも多く,あまり注目されない傾向があります。
学生が書く症例報告書の評価項目に,視覚が含まれないことも多々あります。
全盲やそれに近い状態であれば注目されるのですが,障害の程度が軽いと無視されることがあります。
その結果,様々な不都合が生じます。
視覚の評価について系統だった解説ができるといいのですが,私では力不足です。
この記事では,視覚障害を充分に考慮しないがために生じた失敗の例をあげてみたいと思います。
急性期の病院では,横になっている方を起こして理学療法室に連れて行くという状況がよくあります。
そういう時に,私は眼鏡をかけてもらうのを忘れたことがあります。
眼鏡がないと何かと困ります。
この失敗で私は視覚のことを考えるようになりました。
自己紹介をする時に名乗りながら名札を見せたのですが,名札の文字は見えていませんでした。
名札を見せる時に,その名札を相手の顔に向かって近づけていってしまいました。
老眼だと,近づいてくる小さい文字はかなり見えづらいものです。
また,老眼鏡はレンズの下の方で近くを見るようになっていますから,顔の正面に提示されたものはよくみえません。
自主トレの方法を書いた紙を渡したのですが,白内障で文字が見えていませんでした。
身振り,手振りで運動療法の指示を出していたのですが,見えていませんでした。
視野の狭い人に横の方から近づいて行きました。
視野の狭い人にとっては,突然目の前に人が現れたことになり,驚かせてしまいます。
認知症の人を不機嫌にさせてしまうことがあるのですが,これも原因の一つなのかもしれません。
視野の狭い人に,パソコンを使ってもらおうとしたのですが,視野が狭いとマウスが使えないことを知りませんでした。
リハビリテーション室の窓が大きく,明るくていいのですが,眩しくて見えづらいという方がいました。
「段差がありますから気をつけください」と注意を促したのですが,足下は見えていませんでした。
眼振でものが揺れて見えるため,閉眼のほうがバランスをとりやすいという方がいました。
そういう方は,階段の上り下りでは手すりを持ち目を閉じたほうが安全な場合があります。
そのことに気づくのに時間がかかってしまいました。
膝の痛みや下肢の筋力低下などの運動器の問題があると,人は外出しなくなっていきます。
でも,運動器の問題だけでなく,視覚の問題もあることで,さらに外出するのが億劫になっていることがあります。
そして,運動器の問題よりも視覚の問題のほうが改善しやすい場合があります。
単に眼鏡を調整するだけで問題が解決する場合です。
眼科や眼鏡店に行けないことが問題なのだということです。
アプローチは「ケアマネージャーや家族と交渉する」です。
全体を見ることの大切さに改めて気づかされた出来事です。
同じような失敗を学生が繰り返すのを見てきました。
失敗を共有することで,理学療法士のレベルの底上げができればいいなと思います。
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ぜひご覧ください。
2021年1月5日
2018年12月18日
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